企業型DCの実施事業所が2年で約24%増えた理由とは?

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企業型DCの実施事業所数は、2023年3月末の47,138事業所から、2025年3月末には58,326事業所へ増えました。2年間で11,188事業所、約23.7%の増加です。企業型DCは、一部の企業だけが採用する制度から、幅広い職場で検討される企業年金の有力な選択肢へ移りつつあります。


企業型DCの実施事業所数は着実に増えている

「最近、企業型DCを導入する会社が増えていると聞きますが、本当ですか」

「一過性ではなく、今後も広がっていく制度なのでしょうか」

中小企業の経営者や人事担当者から、このような質問を受けることがあります。

企業型DCの広がりを考えるときには、加入者数だけでなく、実際に制度を実施している事業所数を見ることが重要です。

厚労省が掲載する統計によると、企業型DCの実施事業所数は、2023年3月末の47,138事業所から、2024年3月末には52,033事業所、2025年3月末には58,326事業所へ増加しました。

2年間で11,188事業所、増加率は約23.7%です。

加入者数も、2023年3月末の805万人から、2025年3月末には862万人へ増えています。

企業型DCは、制度を利用する社員だけでなく、制度を実施する職場そのものが増えていることがわかります。

約24%という伸びは、小さな変化ではありません。

企業型DCが、一部の先進的な企業だけが採用する制度ではなく、より幅広い企業に選ばれる段階へ進んでいることを示す数字といえるでしょう。


規約数の増加だけでは捉えきれない広がりがある

今回の数字で注目したいのは、企業型DCの「承認規約数」と「実施事業所数」の伸び方の違いです。

企業型DCの承認規約数は、2023年3月末の7,049件から、2025年3月末には7,432件へ増えました。2年間の増加率は約5.4%です。

一方、同じ期間に実施事業所数は約23.7%増えています。

規約数と実施事業所数は、同じものではありません。

一つの企業型DC規約を、複数の事業主や事業所が共同で実施する場合があります。そのため、一つの規約に対して一つの事業所だけが対応するとは限りません。

ただし、規約数と実施事業所数の統計だけで、増加した事業所のうち何社が既存規約に参加したのかまでは判断できません。

それでも、規約数より実施事業所数が大きく伸びている事実は、企業型DCの普及が、規約数の増加だけでは捉えきれない広がりを見せていることを示しています。

新しい制度がつくられているだけではなく、より多くの職場で企業型DCが実施されるようになっている。

この点が、今回の数字を見る上で重要です。


「特別な制度」から「現実的な選択肢」へ

かつて企業年金というと、大企業や従業員数の多い会社が導入するもので、中小企業には関係ないという印象を持つ経営者も少なくありませんでした。

制度設計が難しい。

導入に手間がかかる。

社内に専門知識を持つ担当者が必要になる。

中小企業には負担が大きい。

そのように考えられていた面があります。

しかし、実施事業所数の伸びを見る限り、企業型DCは「一部の企業だけが導入する制度」ではなくなりつつあります。

既述したように、企業型DCには、複数の事業主や事業所が同じ規約を共同で実施できる仕組みもあります。中小企業が企業型DCを検討する方法は、自社だけで一から制度を構築する形に限られません。

もちろん、企業型DCの導入が簡単だと断定することはできません。

掛金をどのように設定するのか。

既存の退職金制度とどう整理するのか。

社員にどう説明するのか。

導入後の運営を誰が担うのか。

こうした検討は必要です。

それでも、実施事業所数が短期間で増えている事実から、企業型DCが以前より幅広い職場で採用されるようになっていることは確認できます。

以前は「うちのような会社には難しい」と、検討前から候補から外されることもありました。

現在は、「導入できるかどうか」より、「自社に合う形でどのように設計するか」を考える段階へ変わりつつあります。


DBの減少よりも、企業年金を選ぶ基準の変化に注目すべき

企業型DCの伸びを考える際には、確定給付企業年金、いわゆるDBの動きも参考になります。

DBの制度数は、2023年3月末の11,928件から、2025年3月末には11,653件となりました。2年間で275件、約2.3%の減少です。

ただし、この数字をもって「DBから企業型DCへの単純な交代が起きている」と結論づけるのは適切ではありません。

DBと企業型DCでは、制度の性格や会社が担う役割が異なります。会社の状況によっては、DBが適している場合もあります。

また、企業型DCは実施事業所数、DBは制度数で集計されているため、数字の大きさをそのまま比べることもできません。

今回注目したいのは、どちらの制度が優れているかではなく、企業が退職金制度や企業年金を選ぶ際の基準が変わっていることです。

以前は、将来の給付を会社がどのように準備するかが、制度選びの中心でした。

現在は、それに加えて、

会社が長期間継続できるか。

社員数や組織の変化に対応できるか。

社員に制度の価値を説明できるか。

採用や人材定着にも活用できるか。

導入後の負担や運営を見通せるか。

といった視点も重要になっています。

企業型DCの実施事業所数が増えている背景には、制度の人気だけではなく、企業年金に求められる役割が変化していることがあると考えられます。


「他社も導入している」だけでは不十分

ある中小企業では、取引先や同業他社で企業型DCを導入する会社が増えていることを知り、自社でも検討を始めました。

経営者は、「これだけ増えているなら、うちも導入した方がよいだろう」と考えます。

導入実績の多さは、確かに安心材料になります。社内でも、「多くの会社が採用している制度です」と説明しやすくなります。

しかし、検討を進める中で、社員から質問が出ました。

「会社は、何を目的に導入するのでしょうか」

「現在の退職金制度は、どうなるのでしょうか」

「導入した後、会社はどのような効果を期待しているのでしょうか」

そこで経営者は、企業型DCを導入すること自体が目的になり、自社が制度を通じて何を実現したいのかを十分に整理していなかったことに気づきました。

企業型DCの実施事業所数が増えることは、制度への認知や信頼が広がるという点で前向きな動きです。

一方、普及するほど、「他社も導入しているから」という理由だけで制度を選びやすくなる面があります。

導入事例が少ない制度であれば、企業は慎重に調べます。

しかし、一般的な制度になってくると、「多くの会社が利用しているから大丈夫だろう」と安易に考え、目的や自社への影響を確認しないまま進めてしまうことがあります。

普及した制度だからこそ、自社に導入する意味を明確にする必要があります。


導入の有無より制度設計が問われる

企業型DCが一部企業の特別な制度だった時期には、「導入するか、しないか」自体が大きな経営判断でした。

しかし、実施事業所数が増え、現実的な選択肢になった現在は、その先が問われます。

何のために導入するのか。

誰を対象にするのか。

会社として、どの程度の負担を継続するのか。

既存の退職金制度はどうするのか。

社員に何を伝え、どのように理解してもらうのか。

導入後に、何をもって制度の効果を判断するのか。

同じ企業型DCであっても、設計や運営によって社員の受け止め方は変わります。

会社の目的が明確であれば、社員にも制度の意味を説明しやすくなります。

反対に、目的が曖昧なままでは、会社が掛金を負担していても、その価値が社員に伝わらない可能性があります。

企業型DCの普及が進むことで、「企業型DCがある」という事実だけでは、他社との差がつきにくくなるかもしれません。

その一方で、自社の課題に合う形で制度を設計し、社員に伝え、継続して運営する力の重要性は高まります。

これから企業型DCを検討する会社に必要なのは、制度の概要を知ることだけではありません。

自社の経営課題と制度を結びつけることが重要です。


企業型DCは、「特別な選択肢」から「標準的な検討対象」へ

企業型DCの実施事業所数が2年間で約24%増えたことは、企業型DCが企業年金の有力な選択肢として広がっていることを示しています。

承認規約数より実施事業所数が大きく伸びていることからも、企業型DCの普及が、規約数だけでは捉えきれない広がりを見せていることがわかります。

企業型DCは、一時的な話題として注目されているだけではありません。

企業年金を検討する際の「特別な選択肢」から、「標準的な検討対象」へ移りつつあると考えられます。

今後、企業型DCを実施する会社がさらに増えれば、採用や福利厚生の説明でも、「企業型DCがあること」だけでは十分な差別化にならない可能性があります。

そのときに問われるのは、

なぜ自社が企業型DCを導入するのか。

どのような考え方で制度を設計しているのか。

社員にどのような価値を届けたいのか。

という会社ごとの姿勢です。

制度が一般化するからこそ、その使い方に会社の考え方が表れるようになります。


企業型DCを外しては考えられない時代へ

企業型DCの実施事業所数は、2023年3月末から2025年3月末までの2年間で、47,138事業所から58,326事業所へ増えました。

増加率は約23.7%です。

一方、承認規約数は7,049件から7,432件へ増え、増加率は約5.4%でした。

この数字は、企業型DCが新しくつくられているだけでなく、規約数の増加だけでは捉えきれない規模で、実施する職場が増えていることを示しています。

企業型DCは、既に一部の企業だけが導入する特別な制度ではありません。

企業年金を新設・見直しする会社にとって、現実的で有力な選択肢になりつつあります。

もちろん、すべての会社に企業型DCが最適だと断定することはできません。

DBや中小企業退職金共済、退職一時金など、別の制度が自社に合う場合もあります。

それでも、これから企業年金や退職金制度を考えるのであれば、企業型DCを最初から検討対象から外すことは難しい時代になりました。

重要なのは、企業型DCを導入するかどうかだけではありません。

自社が何を実現したいのかを整理し、その目的に合う制度を設計することです。


企業型DCが普及する今こそ、自社に合う制度設計を

企業型DCの実施事業所数が増えているからといって、他社と同じ制度をそのまま導入すればよいわけではありません。

会社によって、現在の退職金制度、社員構成、採用課題、将来の事業計画、継続できる負担水準は異なります。

私の所属するライフビジョナ総合研究所では、中小企業の経営者・人事担当者の皆さまとともに、まず自社の現状と導入目的を整理していきます。

現在、どのような経営課題を抱えているのか。

今後、どのような社員に働いてもらいたいのか。

退職金制度を、経営や人事の中でどのように位置づけるのか。

会社として、どの程度の負担なら長く続けられるのか。

企業型DCを導入した場合、どのような効果を期待するのか。

こうした点を確認した上で、企業型DCを含む選択肢から、自社に合う制度設計を検討します。

企業型DCが普及期に入った今こそ、「導入できるか」ではなく、「自社にどう生かすか」を考えることが重要です。

「企業型DCが自社にも適しているか確認したい」

「今の退職金制度と比較して考えたい」

「他社の導入が増えている理由を、自社の経営課題と照らして整理したい」

「導入ありきではなく、最適な制度から検討したい」

このようなお悩みがありましたら、ライフビジョナ総合研究所をご活用ください。