2026年、企業型DCはこう変わる ~経営者・人事が押さえておきたい改正の全体像~

Gemini Generated Image 9bmjve9bmjve9bmj

2026年は、企業型DCにとって大きな変化の年です。

1月に税制改正、4月と12月にDC法改正。

施行時期が分かれていて、「結局いつ、何が変わるのか」がわかりにくいという声をよく聞きます。それぞれの改正は個別に報じられることが多く、全体像を一本の線として見通しにくい状況です。

それを踏まえ、今回は、2026年の主な改正を施行時期ごとに整理します。

マッチング拠出の制限撤廃や退職所得控除の10年ルールなど、過去のブログで個別に取り上げたテーマもありますが、今回は全体像を一本にまとめ、改めて時系列で見通せるようにしました。

企業型DCを導入済みの会社にも、これから導入を検討している会社にも、「自社にとって何が関係するのか」を見極めるための地図としてお読みいただければと思います。


2026年1月 退職所得控除の「10年ルール」スタート

年初から適用が始まっているのが、税制面の改正です。

DC一時金と退職金のように、複数の退職所得を異なる年に受け取る場合、退職所得控除の調整計算の対象期間が、従来の「5年超」から「10年超」に延長されました。

たとえば、60歳でDC一時金を受け取り、65歳で退職金を受け取るというパターンは、これまでは5年超の間隔で控除をそれぞれ活用できました。改正後は10年超の間隔が必要となり、このパターンでは控除の重複適用ができなくなります。

なお、退職金を先に受け取り、その後にDC一時金を受け取る場合の調整期間(いわゆる「20年ルール」)には変更はありません。

【御社への影響】

退職金制度と企業型DCを併用している会社では、社員から「一時金の受け取り方をどうすればよいか」という相談が増える可能性があります。

ただし、受け取りの順番や方法(年金形式との組み合わせなど)によって影響を回避できるケースもあります。「一律に不利になる」わけではないので、選択肢を整理して説明できる体制を準備しておくことが大切です。継続投資教育の中で、出口の税制について触れる機会を設けておくとよいでしょう。


2026年4月 マッチング拠出の制限撤廃

4月1日施行の改正の中で、最も注目されているのがこの改正です。

企業型DCのマッチング拠出(加入者掛金)について、「事業主掛金の額を超えてはならない」という制限が撤廃されました。

たとえば、事業主掛金が月額1万円の場合、改正前は加入者の上乗せも月額1万円が上限でした。改正後は、事業主掛金と加入者掛金の合計が拠出限度額(4月時点では月額55,000円)の範囲内であれば、加入者が自由に拠出額を設定できます。上の例なら、加入者は最大45,000円まで上乗せできることになります。

社員の立場からすると、「会社の掛金が少なくても、節税しながら自分で老後の準備を上乗せできる」余地が広がったことになります。

【御社への影響】

この改正を自社の制度に反映するには、企業型DCの規約変更が必要です。規約変更を行わなければ、法改正が施行されても従来の制限がそのまま残ります。

なお、今回の変更は「特に軽微な変更」として厚生局への届出は不要とされています。

また、4月から11月までの間に限り、初めて事業主掛金を超える拠出を行う社員には、「年1回」の変更回数制限の例外となる経過措置が設けられています。

マッチング拠出をまだ導入していない企業にとっては、このタイミングで導入を検討する契機にもなり得ます。


2026年4月 自動移換の説明が「退職前」に義務化

もう一つの4月改正は、退職時の事務フローに直結する変更です。

企業型DCの加入者が退職後6か月以内に資産の移換手続きを行わないと、その資産は国民年金基金連合会に自動移換されます。自動移換された資産は運用されず、管理手数料だけが差し引かれていく状態になるため、社員にとっては不利益が大きい仕組みです。

従来、事業主がこの手続きについて説明する義務は「退職後」に生じるとされていました。

改正後は、「退職が見込まれる段階」、つまり退職前に説明することが義務付けられます。

【御社への影響】

人事・総務の退職手続きフローの中に、DC資産の移換先に関する説明を組み込んでおく必要があります。

退職届を受理した時点で、移換先の選択肢(他社の企業型DCへの移換、iDeCoへの移換など)を案内できるように準備しておくと、社員が手続きを先延ばしにするリスクを減らせます。

説明用のリーフレットやチェックリストを用意しておくのも有効です。


2026年4月 簡易型DCの廃止と通常DCへの統合

4月にはもう一つ、制度の枠組みに関する改正があります。

2018年に中小企業向けに創設された「簡易企業型年金(簡易型DC)」が廃止され、通常の企業型DCに統合されました。簡易型DCは、従業員300人以下の中小企業がDCを導入しやすいように、手続きが簡素化された仕組みでした。

統合にあたり、簡易型DCで認められていた手続きの簡素化の一部が通常の企業型DCにも取り込まれています。

実は、簡易型DCはほとんど普及しませんでした。制度設計の自由度が低く、手続きの簡素化も限定的だったことから、導入企業はごくわずかにとどまりました。今回の廃止・統合は、普及しなかった制度を整理しつつ、その簡素化のエッセンスを通常のDCに反映させたものと言えます。

【御社への影響】

これから企業型DCの導入を検討する会社にとっては、制度区分が一本化され、導入・運営のハードルが下がる方向の改正です。「企業型DCは手続きが大変」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、制度の整備は着実に進んでいます。


2026年12月 拠出限度額が月額62,000円に

12月1日に施行される改正の中で、もっとも大きいのが拠出限度額の引き上げです。

企業型DCの拠出限度額が、現行の月額55,000円から月額62,000円に引き上げられます。

なお、企業型DCは翌月入金のため、実質的に新しい限度額が適用されるのは2027年1月拠出分からとなります。

4月のマッチング拠出制限撤廃と合わせて考えると、12月以降は62,000円の枠内で加入者が拠出額を設定できるようになるため、社員にとっての制度の活用幅はさらに広がります。

【御社への影響】

このタイミングで事業主掛金そのものの引き上げを検討する場合は、規約変更や労使合意のスケジュールを早めに見通しておく必要があります。マッチング拠出を導入している企業は、限度額引き上げに合わせて社員への案内を更新しておくとよいでしょう。

<注意点:DB併用企業は「経過措置」の確認が必要>

拠出限度額の引き上げに関して、確定給付企業年金(DB)を併用している企業は注意が必要です。

2024年12月施行の改正で、DBを併用している企業の企業型DC掛金上限を月額27,500円とする経過措置が設けられました。この経過措置は、承認申請を伴う規約変更等を行わない限り、引き続き適用されます。

つまり、12月に拠出限度額が62,000円に引き上げられても、経過措置が適用されている間は、DC掛金の上限は月額27,500円のまま変わりません。

一方、経過措置を解除して新しい枠組みに移行した場合、DC拠出限度額は「月額62,000円-DB掛金相当額」となります。たとえばDB掛金相当額が月額20,000円の場合、DC拠出限度額は月額42,000円に拡大します。

ただし、経過措置の解除にはDB側の制度設計への影響も含めて慎重な検討が必要です。

自社のDB掛金相当額がいくらか、解除した場合にどのような影響が出るかを、運営管理機関に事前に確認しておくことをお勧めします。


2026年12月 iDeCoの加入年齢が70歳未満に

個人型DC(iDeCo)の加入可能年齢が、現行の65歳未満から70歳未満に引き上げられます。

これは企業型DCの制度改正そのものではありませんが、60歳以降も働く社員が増えている中で、「企業型DCの資格喪失後にiDeCoで運用を継続する」という選択肢が広がることになります。社員からの問い合わせが増えることが見込まれます。

あわせて、これまでiDeCoの掛金上限に設けられていた企業年金の有無による制約も見直されます。12月以降は、企業型DCとiDeCoを合わせて月額62,000円の枠内で拠出できる仕組みに整理されます。

【御社への影響】

社員からiDeCoとの併用に関する問い合わせが増えることが想定されます。

自社の企業型DCの拠出限度額やマッチング拠出の有無に応じて、社員がiDeCoをどの程度活用できるのかを整理しておくとよいでしょう。

継続投資教育や社内報などで改正内容を案内する機会を設けることをお勧めします。


おわりに

こうして並べてみると、2026年はDC制度にとって、ここ数年で最も変化の大きい1年だということが見えてきます。

どれも「制度が使いやすくなる方向」の改正です。けれど、改正があっても会社として何もしなければ、制度は変わりません。マッチング拠出の制限撤廃は規約変更をしなければ反映されませんし、自動移換の説明義務も退職手続きのフローを見直さなければ、現場に浸透しません。

制度が変わるタイミングは、社員に対する説明の機会でもあります。改正に合わせて「うちの会社のDCは、こう変わります」と伝えるだけで、社員の制度への関心は変わります。そして、そうした説明ができる会社は、制度を“ある状態”から“活かしている状態”に一歩近づきます。

御社にとって、どの改正が一番影響が大きいか。まずはこの記事を片手に、社内で棚卸しをしてみることから始めていただければ幸いです。

改正内容の詳細や、自社の規約への反映方法を知りたい方、この機会に企業型DC導入を検討してみようという方は、お気軽にLV総研までご相談ください。