■118万人 総額2800億円 企業型確定拠出年金の移換忘れ
会社で長年働いてきた従業員が、いざ退職して新しいステージに進むとき、忘れられがちなのが「企業型確定拠出年金(企業型DC)」のお金です。この企業型DCの資産、実は多くの方が転職や退職の際にそのまま放置してしまい、活用されないままになっていることをご存知でしょうか?
最近の調査では、なんと118万人もの方が企業型DCの資産を移すのを忘れていて、その総額は2800億円にも上ると報告されています。このままでは、せっかく積み立てたお金が無駄になってしまいます。
企業としては、従業員が退職した後も、この大切なお金が適切に管理されるようにフォローする仕組みを整えることが求められています。今回は、企業ができる具体的な対策について考えてみましょう。
■企業型DCの現状とデータでみる深刻さ
企業型DCは、会社が従業員のために積み立てる老後資金の一部です。退職後、このお金は新しい職場の企業型DCや、個人で加入できる個人型(iDeCo)に移すことができる仕組みになっています。しかし、多くの方がこの手続きを忘れてしまい、結果として年金資産がそのまま放置されてしまうことが少なくありません。
具体的な数字を見てみましょう。2022年度末時点で、退職した後に企業年金を移し忘れた人の数は約118万人に上ります。そして、その放置された資産の総額は約2800億円にもなります。この10年間で、放置された資産の金額は3倍以上に増加しており、事態はますます深刻になっています。
■なぜ年金が放置されてしまうのか?
では、なぜこんなに多くの人が年金を放置してしまうのでしょうか?主な理由の一つは、退職時に必要な手続きがわかりにくく、忙しい中でついつい後回しにしてしまうことです。また、企業が退職者に対して適切に情報提供を行っていない場合も多く見受けられます。
さらに、年金が自動で移し替えられる「自動移換」の仕組みがあるものの、この場合は資産が実際には運用されずに塩漬け状態になり、手数料だけがかかってしまいます。
■企業の役割と責任
企業は従業員が退職する際、単に「お疲れさまでした」と送り出すだけではなく、その後の老後資金管理についてもきちんとサポートする責任があります。特に企業年金の移行については、従業員自身がその手続きを理解し、確実に進めるためのフォローが必要です。
具体的なフォローアップ方法
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退職時の説明会を開催する
退職が決まった従業員に対して、年金資産の移行手続きについての説明会を開催することが有効です。そこで、具体的な手順や必要書類、移行先の選択肢などを詳しく説明し、不安を解消します。
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手続きガイドを提供する
退職時に、年金資産の移行手順をまとめたガイドブックやチェックリストを提供することで、従業員が手続きの漏れなく行えるように支援します。また、オンラインでのサポートも行えるとさらに効果的です。
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定期的なフォローアップ連絡
退職後も一定期間、従業員に対してフォローアップの連絡を行うことが重要です。年金資産の移行手続きが完了していない場合は、その状況を確認し、サポートを続けることで、放置を防ぐことができます。
まとめ
退職後の企業年金が放置されてしまう問題は、従業員にとって非常に重要な課題です。企業としては、退職者がこの資産を忘れてしまわないよう、しっかりとフォローすることで、退職者からの信頼も得られます。特に、退職時の説明や手続きのサポート、退職後のフォローアップなど、企業ができる対策はたくさんあります。
今、企業としてできることは何か?退職者の老後資産を守るために、必要な対策を講じることは、企業にとっても重要な責務です。退職者へのサポート体制を見直し、適切なフォローアップを実施することで、従業員の安心を守りましょう。
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